約束通り竜崎から連絡が入った。
日時は明日の21時。場所は僕が誘拐された林のある公園内。
 
『夜神くんのお父さんも来るそうです』
「父さんも」
竜崎の言葉に驚く。
なんでも、どうしても行かせて欲しいと長官に申し出て、
渋々了承を得たらしい。明日は部下を引き連れくるようだ。
父さんも自分自身に決着をつけたいのだろう。
 
『明日夜神くん宅にワタリと一緒に家の前迄迎えにいきます』
竜崎の申し出に断りをいれた。だが相手は一歩も引こうとはし
ない。
『万が一向かう途中に何かあったりしたら、
こちらの面目が潰れます。ですから必ず迎えにいきます』
言葉はどうであれ、竜崎は僕の事を心配して言ってくれるのだ。
「解ったよ、宜しく頼む」
先に根負けしたのは僕の方で、彼の申し出に従う事にした。
『では明日のこの時間に』
「あぁ、解った。お休み竜崎」
『お休みなさい、夜神くん。失礼します』
相手の通話が切れた音を聞き、こちらも通話を切った。
 
明日、全てに決着が着く。
父も
僕も
竜崎も…
 
僕は携帯を握りしめた。
 
 
 
 
翌日。
午後20時50分。
おもむろにピンポーンとチャイムが鳴った。
母は鳴らした人物を出迎えた。
 
「月、お客様よ」
てっきり近所の誰かだろうと勝手に思って込んでいた為、
行き成り母に名前を呼ばれ、内心慌てた。
「はい」
一瞬竜崎の顔が浮かんだが、それは有り得ないと考え直す。
では一体誰だろうと思いながら部屋の扉を開け、
階段を降り玄関に向かう。
 
「ワ、ワタリさん」
「お迎えに上がりました」
そこには予想だにしなかった人物が佇んでいた。
慌てる僕に母は力強い声で、行ってらっしゃいと言った。
「母さん、知っていたのか?」
家族に嘘をつき、僕がこの事件を追っていた事を。
驚いている僕に、母は笑みを称え、主婦の感よと答えた。
「それに何時かこうなる事は大方予想していたわ。
だから多少覚悟はついていたの」
「母さん…」
「月、全てに決着つけてきなさい。
そして無事に帰ってくるのよ」
子供の変化に気付かない親等何処にもいないのだ。
それも愛する我が子なら尚更。
それをおくびにも出さない母を僕は甘くみていたのかもしれない。
「解ったよ、母さん。じゃ行ってきます」
「行ってらっしゃい月、くれぐれも気をつけて」
母の言葉に頷き、ワタリさんの後を追うように家を出た。
 
 
 
ワタリさんの車の後部座席に乗り込むと竜崎が足を抱え座っていた。
「お待ちしておりました、夜神くん」
「竜崎」
ワタリさんが運転席に乗り込み、車は動き出した。
 
「家族との挨拶は済みましたか?」
行き成りの竜崎の問いに驚く。
「どうして知っているんだ?」
「夜神くんが家に泊まった晩、貴方の記憶を解く事を
電話で伝えておきました」
「なんだって!?」
「貴方のお母さんは私に一言宜しくお願いしますと
言っておりました」
「………」
僕は俯いた。
そしてその時の母の心中を察すると複雑な気持ちになった。
「貴方が羨ましいです、夜神くん」
唐突に言葉をかけられ、竜崎を見る。
竜崎の横顔からは何も見出だす事が出来ない。
「どうしてだい?君にも君を思いやる肉親がいるだろ?」
僕はワタリさんを思い浮かべながら、竜崎に問った。
しかし彼はいませんと否定した。
「私は生まれてこのかた天涯孤独の身です。
ですから肉親の愛情なんて物、私は知りません」
「じゃあワタリさんは?」
僕の質問に竜崎が答えようとしたその時、
先程から黙っていたワタリさんが沈黙を破った。
「竜崎、そろそろ目的地に到着致します。降りる準備を」
「解った。では夜神くん、この話は後程」
「…あぁ」
上手くはぐらかされた感も否めないが、渋々了承した。
 
目的地に到着し、車を降りた。
少し風が冷たく感じ、僕はブルゾンの襟を立てた。
「月くん」
嬉しそうな顔し、駆けつけてきたのは父さんの部下の松田さんだ。
「お久し振りです」
「お久し振り。それにしても今回の事件も月くんが
協力していたんだって?
本当凄いや。高校卒業したら警察官になるつもり無い?」
松田さんは人懐っこい笑みを浮かべ話す。
この人とは確か8歳ぐらい違うがそんな気がしない。
一学年上、若しかしたら同学年ぐらいの錯覚に陥るのは
彼の言動とこの童顔の所為だろう。
「協力って言っても殆ど彼が推理したようなものですし、
将来警察官になるなんて考えたこともないですよ」
謙遜するのは、何時の間にか見に着いてしまった習性だ。
僕の言葉に残念そうな顔つきになる。
「夜神くん、彼は?」
隣に居る竜崎が話しかけてきた。
竜崎は知っているだろうと勝手に思い込んでいた。
「彼は父の部下で」
「松田といいます。宜しくお願いします」
僕の言葉を攫うように松田さんは竜崎に挨拶した。
「竜崎です、宜しくお願いします」
習うように竜崎も挨拶する。
「彼は探偵で先程言ったけど今回の事件は殆ど
彼が推理したようなものなんだ」
僕の言葉に松田さんは凄いですねと関心をし、直ぐ驚く表情になった。
「えっところで月くん今探偵って言いました?」
驚いた調子で松田さん問われ、そうだけど、と答えた。
言ってはまずかったのだろうか…
「じゃあ彼は世界的にも有名なアノ」
「松田!!集合だ!!早く来いッ」
松田さんの言葉は父のもう一人の部下である相沢さんに
遮られた。
「はいッ!!今行きます」
顔色を変え、父の元へ駆け出す松田さんの後に僕らも従う。
「竜崎」
「なんですか?夜神くん」
「君、未だ僕に色々と隠しているんじゃないのか?」
恨めしそうな僕の表情とは対照的に
竜崎は惚けた表情を浮かべている。
「一体なんの事ですか?私はしがない探偵ですよ」
「でも今松田さんが」
「あれは彼の勘違いでしょう」
小さな声で繰り返される会話。
僕は憮然とした気持ちで竜崎を見た。
何時か彼の化けの皮を剥してやる。
そう固く決意した。
 
「では先程話した作戦の確認をする」
総指揮官は父が取るようで、段取り、各配置など確認事項を
部下に説明していく。
僕は父が仕事をしている姿を始めて目の当たりにした。
「質問は無いか?では以上の事に注意し各々各所定位置に移動」
「はい」
父の言葉に数十人の部下が移動し始めた。
「月」
父に行き成り呼ばれ、返事をした。
「お前は竜崎と一緒に行動を取りなさい。
もしもの事があったらワタリさんが助けてくれるだろう」
「はい」
「竜崎」
父の視線は僕から竜崎に移った。
「はい」
「月をくれぐれも頼む」
「解りました」
父が竜崎に一礼すると、足早に現場へと急いだ。
「では夜神くん。私達も移動しましょう」
「あぁ」
竜崎の後を追うように僕もアイツが待つ場所へと移動した。
 
公園から数分離れ、住宅街の一角。
そこにアイツが住む家があった。
どう見ても普通の一軒家。
この中にこの事件、そして13年前の事件の被告である
男が住んでいる。
その家をぐるりと四方から数十名の警察が囲んでいる。
僕と竜崎はこの家を曲がった角に居た。
此処の場所に行く前に父から渡された無線機から声がした。
「私と模木で今から突入する」
父の声に僕らは一言了解と返した。
予め、大家から借りた鍵で戸を開け、父達は大山宅に入っていった。
数分間父からの応答は無く、唯ガサゴソという雑音が耳に入ってくる。
「竜崎、まさかこれって」
犯人は此処には居ないのでは?
僕の言外の言葉を感じ取ったのか、竜崎は渋い表情を
浮かべ、大山が住む家をじっと見詰めている。
「夜神さん」
行き成り無線機に話かけた。
「どうした竜崎」
父の声が返ってきた。
「余り歩きまわらないで下さい。向こうが隠れている可能性があります」
「しかし隠れる場所なんて何処に、模木ッ!!」
無線機から父の切迫した声が聞こえた。
「行きましょう、夜神くん」
「あぁ」
僕たちは急いで父が待つ、犯人の家へと駆け込んだ。
 
大山が住む家はとてもこざっぱりしており、確かに隠れるところなんて
余り無いように伺えた。
「夜神くんはけして私から離れないで下さい。前も言ったとおり犯人は
未だに貴方に何らかの執着心は持っています」
「解っている」
僕は逸る気持ちを抑え、竜崎の背中に張り付くように付いて廻った。
1階の玄関、トイレ居間、風呂場、台所、和室を廻り、2階へ上がる。
2階には洋室が2部屋と少し大きめのクローゼット。
其処も見て廻ったが何処にも父達や大山の姿が見えない。
そして幾ら無線へ呼びかけても、父達の応答は無かった。
周りは万が一の事を考え、父の要請が無い限り動けない事になっている。
「何処に居るんだ」
苛立ちと焦りがばかりが募る。
前を見ると竜崎が洋室の天井の一点を見詰めていた。
そしておもむろに部屋のクローゼットを開けると、天井の天板を外し
始めた。
「何やってるんだ、竜崎」
「先程上から物音がしました。きっと此処に居ます」
「僕には聞こえなかったけど」
「私には聞こえました」
そう言って屋根裏へと入っていった。
渋々と僕もそれに習う。
 
「此処は」
天井が低く、薄汚く、埃くさい屋根裏を想像していたが、其処は僕の想像を覆された。
ワンフロアのその場所は、天井が高く、とても綺麗で下の洋室なんかよりも生活感が感じられ
本当に部屋のようだった。
「待っていたよ、エラルド=コイル」
机の上にパソコンが有り、其処からの声だった。
「竜崎、エラルド=コイルって」
「私のもう一つの名前です」
「それが本名なのかい?」
僕の質問に御座なりにいいえと答えた。
「今はそれ所ではありません」
竜崎に窘められ、反省する。
竜崎の事に関すると、状況が見えなくなる。
僕が彼を好きになって出来た弱点だ。
「大山、私の事が見えているのなら、後ろに誰が居るかも
知っていますね」
竜崎の質問に勿論だと返ってきた。
僕の背中に一瞬冷たいものが走った。
13年ぶりだね、夜神月くん。相変わらず聡明で
僕が理想する青年へと成長してくれて嬉しいよ」
パソコンからの猫撫で声にゾッとした。
一瞬前の出来事がフラッシュバックされ、吐き気を催した。
「大丈夫ですか、夜神くん」
「あぁ、大丈夫だ」
僕の気配を察したのだろう、竜崎はパソコンから目を離さず
問いかけ、僕はそれに応じた。
「矢張り記憶が戻っているようだね。本当に当時の君は
賢く、それでいて素直で、僕の理想とする子供だったよ。
その陶器で出来たかのような肌に触れられてどれだけ」
「そのような話を聞きに此処にきた訳ではありません」
限界を感じ、耳を塞ごうとした瞬間、竜崎が怒気を孕ませた声で相手の言葉を遮った。
「夜神さん達を何処に隠しましたか?」
「あぁ彼らね」
先程とは違い、あからさまにやる気の無い声で大山は応じる。
「君達の目の前に箱がないかい?その箱の中に彼はいるよ」
確かに目の前に箱がある、しかし大人二人が入るにしては小さすぎる。
僕らの考えを察したのか、大山は自分の言葉に付け加えてきた。
「此れぐらいの箱しか用意出来なかったからね、無理矢理詰めたよ」
相手の言葉に嫌な予感がした。
「無理矢理って…まさか」
僕の言葉に竜崎が賺さず答えた。
「安心して下さい、夜神くん。この部屋からは血の匂いはしていません」
そういわれてみれば確かにそうで、ほっと胸を撫で下ろす。
大山が小さく笑う。
「確かにコイルがいうように未だばらしてはいない。しかし詰める為に
多少無理に折ったり捻ったりしたから時間の問題だな」
「父さんッ!!」
慌てて箱に駆け寄ろうとしたが、竜崎に寸での所で止められた。
「夜神くん落ち着いて下さい。此処で相手に踊らされてどうするですか?
これでは向こうの思う壷です。少しは冷静になって下さい」
「だが父さんが」
それでも駆け寄ろうとする僕に竜崎は僕の袖を強い力で
引っ張った。
「未だ解らないのですか?あれは罠です」
竜崎の言葉に正解という声が重なった。
「流石だ、コイル。少したきつければきっと箱に近づき、
仕込んだ火薬で君ら諸共吹っ飛ばせると思ったのに。
本当に君は邪魔な存在だよ、コイル」
案の定相手の目論見に嵌りかけた事を知り、自分の冷静さが
どれだけ欠けていたのか嫌でも思い知らされた。
「御免、竜崎」
「謝るのなら先に、身内であろうとも少し客観的になって下さい」
「コイル、君は相変わらず非常だな」
パソコンに声に竜崎は眉間に皴を寄せた。
「だから君は施設に連れていかれるんだよ」
施設?どういう事だ?
「本当に貴方には辟易します。いい加減姿を見せたら
どうなのですか?」
苛立つ様な声で相手に言う。可也腹を立てているようだ。
「姿なら先から見せているよ」
声がパソコンと被ったと思った瞬間、背後から口を塞がれた。
「んぐっ」
「夜神くん」
振り向き僕の名前を言う竜崎の表情からは珍しく、焦りを感じられた。
「改めまして、今日和コイル。お会いしたかったよ」
「私は出来れば会いたくなかったです」
「嘘をつかなくてもいい。13年間待たせたね」
少し怒気を孕んだ竜崎の声と楽しげな大山の声。
「君と最後に会ったのは君が11歳の頃か」
「そんな世間話をしたくて此処に居る訳ではありません。早く
その手を離しなさい」
「君は当時からつれないが、今も変わらないね」
大きく溜息を吐く大山に竜崎は冷ややかな視線を送った。
「貴方も相変わらず、吐き気がするような人だ」
竜崎が吐き捨てるように言うと相手は笑った。
「それが師匠に吐く言葉とは本当に君にはつくづくだ」
師匠だって?
竜崎の生い立ちを知っていたり、師匠だったりこいつは一体何者なんだ?
「あの施設でチェスを教わっていた頃はもう少し可愛げがあったのにね」
「大山、本当に五月蝿いですよ」
竜崎のチェスの先生。
そういえば竜崎は僕が言う前にこいつがチェスのプロだと知っていた。
調べて知っていたのかと思ったが、違っていたのか。
「本当に君は嫌って位に直ぐに知識を吸収して、教え易かった分
とても嫌な生徒だったよ」
「お褒めに与り光栄です」
「褒めていないのにね」
笑う大山を竜崎はただ冷たい表情で睨みつける。
「だから段々月くんも君に重なってみえてきてね
あの時殺そうと思ったんだ」
口にかかる圧が重くなる。苦しくなり、相手の腕の中で
暴れた。
「月くん、今コイルと昔話をしている最中で、君はこの後直ぐに構ってあげるから
静かにしてもらえないかな」
そういうと軽く首を締め付けられた。
「ンッ」
「夜神くん」
竜崎が僕の名前を呼ぶ。
「コイル、月くんに気を取られている時間は無い筈だ
そろそろ、箱の中の二人も限界だろう」
相手がちらりと視線を動かし、ニヤリと笑った。
「前回は君に追い詰められてしまったが、今回は私の勝ちのようだね。
矢張り君は師匠である私を越えられないんだよ」
気に障る笑いを高らかに上げる大山に、竜崎は不敵な笑みを浮かべた。
「自惚れるのは未だ早いですよ、師匠」
「どういう事だ」
「突撃―――ッ」
突如床が開き、数人の警察官が屋根裏部屋に駆け込んできた。
「うわっ!!」
相手が驚き、怯んだ瞬間押さえつける力が緩み、
僕は相手の手を思い切り噛んだ。
突然の痛みに相手が隙を見せた時、僕は逃げ出した。
「竜崎」
「夜神くん」
僕は竜崎の所に駆け寄ると、安堵の所為か竜崎の表情が
柔らかいものになった。そして数人の警察官に取り押さえられている大山が目に入った。
「大山、貴方は相変わらず、チェスの時といい、前の時といい本当に不意打ちに弱いですね。
変わらないでいてくれて助かりました」
「お前さてはこれを見越し態と月くんを」
「えぇ、囮にしました。貴方は今も彼に執着しているのはあの《月》で解っていましたから」
竜崎の言葉に怒りを通り越軽く諦めの境地だ。
自分の命すら顧みず、利用できるものは全て利用してきた。今に始まった事じゃない。
「それに、夜神くんの事を信じていましたから」
「竜崎」
本当にそれは本心なのか?
あんな目にあった後なのでどうしても疑心暗鬼に駆られてしまう。
僕は胡乱気に竜崎を見た。
「何ですか?其の目は?」
僕の視線に気付いた竜崎が問いかけてきた。
僕は半分呆れながら、何でもないと答えた。
言ったところでこいつには解らないにきまっている。
「竜崎、どうして彼らは僕達の居場所を?」
代わりに僕が感じた質問を投げかけた。
GPSですよ。高性能小型GPSを予め私の服に仕込んでおいたのです。私達が中に入って
30分間何の動きが無ければ数人の警察が此方に動いてもらえるよう夜神さんに言っておいたのです」
「どうしてそんな大事な事を僕にいわないんだ?」
「言い忘れていました。すみません」
悪びれた様子も無く謝る竜崎を見て、僕に態と其のことを言わなかった事が解った。
こいつは本当に嫌なヤツだ。
「さて、大山、観念して夜神さん達が入っているこの箱の鍵を渡して下さい」
竜崎が捕まっている大山に問いかける。
まさかあの小さな箱の中に自分たちの上司が閉じ込められているとは
予想だにしていなかったのだろう。
竜崎の言葉を聴いた数人の警察官がざわめいた。
中にはその箱に近づこうとしている人がいて、竜崎は制止の声を上げた。
「その箱に無闇に触れると、この部屋ごと吹っ飛びますよ」
警察官の動きがピタリと止まった。
「さぁ大山早く」
竜崎が大山に詰め寄ると、相手は唾を吐きつけた。
「鍵なんてねぇよ」
大山が笑う。
竜崎は無表情で吐きつけられた唾を拭った。
そして思い切り大山の頤を蹴りつけた。
押さえつけられている大山は何も出来ず、その後何度も竜崎の蹴りを食らった。
鈍い音が室内に響く。
冷たい眼差しをした竜崎が相手の視線を合うように、しゃがみ込んだ。
「これ以上手荒なマネはしたく有りません。いい加減鍵の在り処を教えて下さい」
大山の顎を掴み、鍵の在り処を問う。
しかし相手は下卑た笑いを浮かべるだけで答えようとしない。
それどころか又竜崎に向かって唾を吐いた。
「お前なんかにぜってぇ言わねぇよ、バーカ」
竜崎はそれを拭うと又大山を蹴り始めた。
僕も周りも止める事が出来なく、唯それを眺めていた。
 
相手がぐったりし始め、竜崎の動きが止まる。
「すいません、松田さん。この人の衣服脱がしてもいいので調べて貰えませんか」
「あっはい」
行き成り名前を呼ばれた松田さんは急いで意識を無くした大山の元に駆けつけた。
僕は竜崎の隣に移動する。
「竜崎、幾らなんでもやり過ぎだ」
「えぇ私もそう思います」
丸で他人事のように言う彼に僕は何も言えなくなった。
「竜崎、大山の内ポケットから鍵が見付りました」
松田さんが発見した鍵を掲げる。
「ではそれを、あの箱の鍵穴に差し込んで下さい。
差し込む際くれぐれも箱には一切触れないよう注意して下さい。
鍵が開く前に触れると先程もいいましたが、この部屋諸共吹っ飛びますので」
「わっ解りました」
竜崎の言葉に松田さんは強張った表情を浮かべ
了承した。
 
ゆっくりと箱へと移動する松田さんの背を僕らは固唾を飲んで見守った。
床に座り込み、竜崎に言われた通り、箱に触れないようにしながら鍵穴に
鍵を差込、回した。
 
ガチャっという音が静寂とした部屋に響いた。
松田さんはゆっくりと箱を開けた。
 
「局長ッ!模木さんッ!!」
中を見て驚く松田さん。
僕と竜崎も中を見る。
 
そこには不自然に腕や足を曲げられ、気を失っている父と模木さんが居た。
「父さんッ!!」
衝動的に引っ張りだそうとする僕の手を竜崎が止めた。
「駄目です、夜神くん。無理に引っ張り出すと今以上に靱帯等を損傷してしまいます」
「じゃあどうしたらいいんだ」
「取あえず中の配線を切除してから、チェーンソーで箱を切りましょう」
そういうと竜崎は携帯を取り出しワタリさんに急いで工具の準備を頼んだ。
 
ワタリさん来る前に両手両足を錠で嵌められた、大山が連行された。
それから数分後、工具を持ったワタリさんが現れ、竜崎にそれらを手渡すと
先ずは、箱の周りや中に張り巡らされた配線を切除した後、ワタリさんと代わり
中の父達を傷つけないよう慎重に箱の四隅を切断していった。
 
残された僕らは一先ず救急車を呼び、その作業を見詰めた。
最後の板が切られ、バタンという音と共に父達が現れた。
皆、一同に深く安堵の溜息を吐くと、丁度到着した救急隊員が担架を持って部屋にやってきた。
父達は担架で運ばれ最寄りの病院へ搬送された。
 
僕は携帯で母に父の状態を報告し、一緒に病院へと付き添った。
竜崎も一緒にだ。
 
一先ず、大山は逮捕され、この全ての事件に終止符が打たれた。

 

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